売りたいけど売りたくない、感情と利益が交差する、家の査定金額
前回に続きます。
年々足を運ぶのも億劫になり、
千葉の別宅を「売っちゃおうか」
と考え始めた義父。
その相談の言葉に
私も早速協力することにしました。
まずは、売ろうとするならば、
いくらくらいで売れそうなのか、
調べる必要があります。
周辺の売買事例や
路線価や公示地価といった、
公的な指標を元に
物件の査定を行いました。
土地が60坪ながら、
陽あたりも、よく土地の利用価値が高い
東南の角地。
(※1坪は畳2枚分の広さ)
駅からは離れるが、
海岸が近く、住宅地として
ロケーションはまずまず良い。
(ハザードマップでは
津波の危険性は少ないエリア)
イオンショッピングモールも
車で5分くらいで、
高速道路のICも比較的近く、
交通アクセスも悪くはない。
立地はまずまずといったところだが、
周辺の土地相場は
7〜8万円/坪くらいの場所の様子。
単純に掛け合わせると、
8万円/坪×60坪=480万円
が土地の査定金額となる。
そしてここに
昭和48年築の建物
を考慮しなければならない。
考慮するというのは
建物の価値を
加えるのではなく、
価値のない建物分を
差し引くということ。
築年数が古いと価値が高くなる
欧米諸国と決定的に違う
日本の不動産。
住むには住めるものの、
築44年経過した家の価値は、
ほぼ0。
むしろ、
何も建物がない方が、
売却はしやすそうなので、
建物の解体費用も考えねばならない。
建物も40坪くらいある、
昔ながらのゆとりのある間取りであるが、
皮肉にも、解体するとなると、
広ければ広いほど、費用はかかる。
庭木も含めればザックリ230万円くらい
というところだろう。
あと、室内に残る生活の品の数々。
売却するとなれば、
処分しなければならないものばかり。
この処分費用も結構な金額になりそうだ。
安く見積もっても30万はくだらないだろう。
これら解体・処分費用を差し引くと、
この別宅の私の査定額は、
ざっくり220万円くらい。
この220万円という金額、
あなただったら、どう捉えますか?
平成28年のデータで
70歳以上世帯の1ヶ月の支出が
238,650円という統計もありますが、
これでいくと220万円という金額は、
10ヶ月弱分くらいの生活費相当分。
1年分の生活費にも
ならない金額です。
※出所:総務省統計局
世帯人員・世帯主の年齢階級別
1世帯当たり1か月間の収入と支出
(二人以上の世帯)より
古くなり、
維持管理が大変になってきたとはいえ、
一家総出で建築に携わり。
48年もの思い出が詰まったこの家を
1年足らずの生活費相当額で、
売却するのもいかがなものか?
もちろん、維持費はかからなくなるし、
メンテナンスの労力がなくなる
メリットはある。
夫婦二人で海外旅行に数回いける
費用が出てきたと思えば、
それほど悲観する金額とも
受け取れない。
要は、
感情と実益のバランス
をどう考えるか?
ということ。
身内の今後の生活や
後々の相続まで考える話にもなってきたが、
なかなか結論は出ず、
1ヶ月、2ヶ月と経っていった。
何もしないこんな時間を
消費するのであれば、
「貸してみたら?」
という考えが出てきた。
売りたくても売れないのなら、
まずは貸して、貸しながら、
今後どうするか考えよう。
不動産業界25年の
経験と知恵の総力を結集し、
義父へ賃貸での活用を
提案することとなった瞬間である。
それからは賃貸活用するために
あれやこれやと、
考動することになっていたが、
どういう経過となっていったか?
次回に続きます。